泣いた烏がもう笑った

かつての深淵を覗くときまた己も今の深淵を覗かれているのだ

人生の推しに会ってきた話

丁度先週の今頃、私は普段生活している九州の地を離れ都内にいた。

目的はただ一つ、「テニプリBEST FESTA!!~青学vs氷帝~」に参加するためだ。

ZeppDiverCityで行われるこの公演に参加するため私は人生初の遠征を決意した。

 

なぜこれが人生初の遠征となったのか?

それは私が今現在住んでいる場所が大きく関係している。

私が現在住んでいるのは長崎県だ。

出島やハウステンボスで有名なあの長崎県である。

漫画や雑誌、小説の新刊が発売日に届かなかったり見たい作品の劇場版が県内の映画館では上映されず福岡まで映画を見に行ったりしなければならないこともあるが住むには決して悪くないところだと思う。

ただ1つ不満があるとすれば遠征の際に嵩む交通費だ。

九州圏内だったら問題はないが、大阪や東京といった大都市圏で行われるイベントに参加しようと思った場合、私の場合だがまず真っ先に考えるのはイベントの参加費よりも交通費だ。

仮に東京であるイベントに参加しようとした場合、時期にもよるが交通費だけで3万~4万飛ぶこともざらである。

そこに更にチケット代や都内の移動にかかる電車代、飲食代、宿泊代なども含めると学生にはそれなりの額が遠征で飛ぶことになる。

それが遠征を考える際の大きな問題であった。

勿論今回もそれは同じだ。

だが、どうしても行きたい理由があった。

それは今回の公演が青学vs氷帝と冠されているように本当に初期から出演している2校による公演だったからだ。

オタク歴がおよそ人生の半分を占めている私だがハマった当時の熱量のまま追いかけ続けている数少ないジャンルがこのテニスの王子様という作品であり私にとってはもはや実家どころか殿堂入りしている作品である。

登場する学校は多数ありどの学校のキャラクターもとても魅力的で語彙力の足りない私では説明しきれないのが大変悔しいのだがその中でも特に思い入れが深く今でも好きで好きでしょうがないキャラクターが1人いる。

 

それが私の人生の推しである手塚国光だ。

色んな意味で私の初めてを奪っていったのはこの男である。

どこに惹かれたのかと聞かれてもうまく答えられない。

思考も言動も行動も生き様全てに惚れたとでも言えばいいのだろうか。

 気がついたら好きで好きでしょうがなくなっていたとしか答えられないのだから重症だと思う。

でも、それだけの魅力が彼にはつまっていると私は思っている

そして今回の遠征を決断させたのも彼の存在だった。

 

テニスの王子様通称テニプリは過去に何度かライブ形式のイベントが行われている。

近年だと2016年の「テニプリフェスタ2016~合戦~」や2013年の「テニプリフェスタ2013」などがあるがここ数年はあまりこのようなライブ形式のイベントがなく、また過去のイベントに関しても私は日程の関係もあって参加出来ず結局テレビやパソコンの画面越しにしか見たことが無かった。

そんな中で今年の8月に行われた仙台のイベントで発表された久しぶりのライブ形式のイベントの開催。

詳細が出る前に私は参加を決断していた。

 

””一度でもいいから推しに会ってみたい”

 

ずっとくすぶっていた炎が苛烈に燃え上がった瞬間だった。

 

 

映画鑑賞で得られる最速選考に円盤購入による選考、どちらも応募し3公演のうちの1公演のチケットは取ることができた。

チケット当選のメールを確認した後うれしくてうれしく思わず手元にあった本で自分の頭をコツンと叩いていた。

ちゃんと痛みがあった。

それでやっと現実だと認識できた。

ライブは勿論リリイベや応援上映などのイベントに悉く参加出来なかった私にとって僅か数十メートル先にキャラに命を吹き込んでくれた声優さんたちがいて、大好きな曲を歌っていて、キャストさんたちがわちゃわちゃ話していて、スクリーンの大画面には大好きな推しが映っているという光景はずっと夢だった。

ようやっと夢が現実になるのだと思うとそれだけでうれしくて辛かったことも嫌なことも頑張れた。

推しの効果すごい。

ライブについて勉強することも会場までの移動手段の確認も物販の確認もライブに関わる全てが全部ぜんぶ楽しかった。

こんなにワクワクして過ごすのは久しぶりというぐらいワクワクしていた。

 

地に足つかないまま年を越しいよいよライブの日が近づいてきた。

午前中に大学の授業を受けて午後の飛行機で羽田へ。

着いた日は早めに寝てしまい翌日からは大都会東京を少しだけ満喫してきた。

静岡で生まれながら私は東京に部活の大会や修学旅行を含めても片手で足りる回数しか行ったことがない。

地図が読めない人間なので決して広い範囲は回れなかったけどそれでも首都東京をそれなり楽しんでいた。

ツイッターでみるだけだったテニプリの公式ショップにいったり映画を見たり、休日の延長みたいな感じではあったけど、普段インドアで引きこもりといってはばからない人間なのでこれくらいでちょうどいいと個人的には思っている。

 

1月19日、ついに公演初日を迎えた。

会場では見れないけれど運よくライブビューイングのチケットが取れたので中高時代の友達と合流して新宿のバルト9で開演の時を迎えた。

OPは8月に公開された「劇場版テニスの王子様BEST GAMES」のOPでもあったBEST GAMES!という曲のヴァイオリニストのAyasaさんによる生演奏だった。

イントロが流れてきた瞬間に涙腺が死んだ。

比喩ではなく死んだ。

まるで壊れたように涙しか流さなくなったのだ。

生演奏が終わるとすぐにキャストさんたちが登場してきて今回のフェスのために新たに書き下ろされた曲「ベスフェス~Are We Cool?~」の全体唱和が始まる。

スクリーン1枚挟んでいても現実だとは思えなくてそれほどまでに夢みたいな景色だった。

今までのフェスの曲同様歌いやすく覚えやすい歌詞ながらかっこよさと応援歌としての面を併せ持ったこの曲はベスフェスが終わった今でもずっと聴いている。

 

その後は各校部長によるソロ曲が続いたのだがこの時点で私の体内の水分の1/3は失われていたと思う。

CDとは全く違う生の声と演出、ここまで変わるのかと感心すらしてしまうほどの違いだった。

ずっと聴いていた曲が次々に出てくるこの空間はほんとうに夢のような時間だった。

特にこの19日の公演でははじめて氷帝学園のキャストが全員そろった記念すべき公演でもありスクリーンごしとは言えその場に居合わせることができたのが何よりもうれしくて幸運だったな今でも思う。

さらに今回のこのベスフェスのコンセプトは青学vs氷帝であり関東大会初戦をイメージして曲のセトリが組まれていたため、曲を聴くごとにアニメや漫画で見た数々のシーンが蘇りそれがさらに感動を強めていたように思う。

19日のセトリで組まれていた曲はどれも好きな曲ばかりだったのだが圧巻だったのは全員で歌っていたGather という曲だったと個人的には思う。

元々は青と瓶と缶というアニメ内のユニットが歌っている曲なのだが今回はこの曲がアンコールに選ばれていた。

この曲は私が中学生だった当時買っていた数少ないCDの1曲であり大好きな曲でもある。

そのためアンコールにこの曲が選ばれただけでもうれしくて飛び跳ねたいくらいなのだったが歌唱のパート訳がとても素晴らしくてライビュの終わりも終わりに大号泣をかましてしまったのだ。

正直一緒に行ってくれた友人に申し訳ない気持ちしかない。

ソロパートは勿論あるのだが各校のダブルスのペアやシングルスの対戦相手同士、それ以外にも特別な関係の2人(青学の柱(手塚と越前)や跡部樺地)や学校ごとなど関東初戦までの歴史を全て感じられるようなパート訳をしていたように感じたのだ。

勿論これはあくまで私が個人的に感じたことだし感じ方は人それぞれでもあるため断言はできない。答え合わせは円盤が発売されてからだ。

漫画の連載が始まって20年、アニメが始まって18年たつ2019年にこうやって歴史を振り返ることができるようなセトリを組まれるのは本当にしんどいの一言に尽きる。

ライビュの最初から最後までずっとふわふわした状態でいて終わってからもふわふわしていた私が正気に返って最初にまず思ったのはこれ会場で生で聴いたら頭溶けるんじゃないかということだった。

今考えるとお前は何言っとるんじゃ?という感じもするがその時は脳があまりの情報量と感情に処理が完全に追いついていなかったのだと思う。

それくらい感動と歓喜がつまっていたのだ。

 

 

そして翌20日、ついてに会場で公演を見る日だ。

人生初の物販にドキドキしながらぼっちで並び目的のペンライトを購入。

時間に追われながら昼食を取りすぐに開場の列に並んだ。

根がどうしようもないコミュ障のため人が多いところはあまり得意ではないがここにいるのはみな同じ作品が好きな同士だぞという刷り込みはあまりに強力でなにも感じることなく無事会場に入場。

コインロッカーに買ったばかりのペンライトを閉まったまま鍵をかけてしまい1回分のロッカー代を無駄にしてしまったこと以外は特に愉快なイベントはなかったと思う。

開演するまではBEST GAMESの第2弾の公式PVやOVAのCMが流れていたのだがどれも知っているシーンで尚且つ好きな曲ばかり、会場から聞こえてくるのは歓声とも悲鳴ともつかぬ声ばかりで心の底から安心したのをよく覚えている。

開始前のアナウンスが流れていよいよ公演が始まった。

セトリの大枠は19日の公演と大きく変わっていない。

会場いっぱいに光る青と水色のペンライトもステージ上で輝くキャストさんたちも画面いっぱいに映るこのために書き下ろされたキャラクターたちも何も変わらない。

なのに出てくるのは涙と嗚咽だけだった。

会場で直接大好きな曲を聞けることの威力の大きさをやっと私はこの時学んだ。

次いつ見れるのはわからないからしっかりと目に焼き付けたいと思いながらも脳も目も本来の役目を完全に放棄していた気がしてならない。

推しにはヒーリング効果だけでなくデトックス効果まであるのだろうかと真面目に悩む程度には泣いてばかりだった。

でもちゃんと氷帝コール(負けるの青学と敗者は手塚は宗教上の理由で言えなかったが)はしてきたしベスフェスでのコールも全部できたから満足だ。

ペンライトを振る楽しみもこのベスフェスで知ることができた。

2時間強の公演はほんとうにあっと言う間で気がついたら最後のベスフェスが始まっていた気がする。

終わりが来るのがただただ悲しかった。

もっともっとこの時間を共にしたかったなという思いでいっぱいだ。

 

 

 

 

 

終わってしばらく経ってみると好きなものばかりに囲まれていたあの空間はすごく幸せな場所だったと思う。

テニスの王子様もキャストさんたちも先生もプロデューサーもテニプリ関係の楽曲に関わっている作詞家・作曲家の方も2.5の俳優さんたちもテニスの王子様が好きなファンの人たちも私はみんな好きだ。

なんでと言われてもそれはこの一言に尽きると思う

 

”みんなそれぞれの形でテニスの王子様という作品を愛しているから”

 

自分が好きなものを沢山の人たちが大切にしてくれて愛してくれているってこれ以上にないほど幸せなことじゃないかなと私は思っていたりする。